【掲載情報】角川「短歌」10月号/私が新人賞を受賞した頃

みなさまこんにちは。齋藤です。
ちょっと御無沙汰です。
秋ですね~。
さて、本日は掲載情報。

本日発売の


に、齋藤の「桃花水を待つ」(第53回受賞作品)も掲載されております。
あれからもう7年経ったんですね。。。

受賞の知らせを受けたのは、アブダビで働き出してすぐのことでした。

角川「短歌」の2008年11月号には、
歌集『桃花水を待つ』に収録した「みどりの雨」の一連と共に、こんな文章を書いています。

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エッセイ 受賞の頃・受賞以降

私は正月の初詣にも行けばお盆には先祖の墓参りも欠かさない、典型的な日本人である。イスラム教徒ではないのだが、神様は初めてアラブ首長国連邦にやって来たそんな私にも、なかなか味なことをなさった。

まず、空港で入国審査を終えた直後に、それを待っていたかのように礼拝の時刻を告げる「アザーン」が朗々と響いた。定刻通りと言ってしまえばそれまでなのだが、外国暮らしが初めての私にとって、そのタイミングは十分に感動的だった。角川短歌賞受賞の知らせを受けたのは、その五日後のことである。既に携帯電話は使えるようになっていたのだが、どういうわけか両親が日本から電話をかけようとすると何度試してもつながらず、困っていた。そんな中で角川短歌賞授賞の知らせを受けた母が、今度こそ、と祈るような気持ちで電話をかけると、嘘のようにあっさりつながった、と言うのである。このタイミング、神様の仕業でなくて何であろう。

自分の故郷をテーマとした一連での受賞を、その故郷とは全く正反対のアブダビという街で知るというのも、考えてみれば全くおもしろいことであった。あれからもう一年。今日も街には、定刻通りにアザーンが響く。


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そして2012年の本阿弥書店「歌壇」2月号の特集。

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「私が新人賞に応募したころ」

ふるさとの川の濁りに羽化したるカゲロウは吹雪よりも激しき 「桃花水を待つ」第五三回角川短歌賞受賞


 私の故郷である福島市を流れる阿武隈川では、毎年秋口になるとカゲロウが大量発生する。羽化して次々と川面から飛び立ったカゲロウたちは交尾と産卵のために狂ったように乱舞し、一晩で死んでしまう。川にかかる橋の上は真っ白いカゲロウたちに覆われて、吹雪のようになる。今から二十年から三十年ほど前、私が子どもの頃が特にすさまじく、視界が悪くなったり、雪のように積もったカゲロウたちの亡骸からしみ出す油分で道路が滑りやすくなったりすることで交通事故も起きた。

 大量発生のメカニズムを知ったのは、中学生ぐらいの頃だったと思う。カゲロウの幼虫は、水に溶け込んだ有機物を食べて成長する。福島市がある阿武隈川の中流域は、人間の生活排水などが流れ込むためにその有機物が過多となっており、カゲロウにとって最高の環境なのだ、と。つまり、川の水が汚れているのである。

「桃花水を待つ」の一連は、このふるさとの汚れた、濁った川沿いを毎日のように一人で歩きながらまとめたのである。六年間続けたがどうしてもつらくて仕方がなかった仕事を逃げるように辞めて、福島市の実家に戻っていた。懐かしい川沿いを歩きながら、川の水質が大分改善され、以前ほどの規模ではなくなったカゲロウの乱舞を思った。そして気づいたのである。川の有機物、つまり汚れを糧として生きるカゲロウは、水の澄んでいる清流では生きられない。しかし、汚れて濁った川だからこそ、あれほど凄まじい乱舞が生まれるのだ。私も、そうなのではないだろうか。清流では生きられない。しかし汚れも濁りも全てを飲み込んで必死に生きたならいつか、舞えるのではないか、あのカゲロウたちのように‐‐。私の中で滞っていた何かが、確実に動き始めたのはこの時である。一年後、私は「桃花水を待つ」の一連を仕上げ、日本語教師としてアブダビへ赴任することになる。角川短歌賞受賞の知らせを受けたのは、アブダビに着いて一週間目のことだった。

 昨年三月の震災と原子力発電所の事故によって、ふるさとは今なお苦しんでいる。先のことは何も見えない。


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『湖水の南』と合わせて、お読みいただければ幸いです。



久々に今夜の一曲。




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by chicayoshi | 2014-09-25 20:11 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)

短歌結社「かりん」所属齋藤芳生のブログです。「みしゅみしゅ」はアラビア語で「あんず」のことです。主に齋藤芳生の掲載情報やエッセイなど。最近は写真も好きです。どうぞよろしく。


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