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さみどりの合歓

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ずっと前に撮った写真より。雨ですなあ。



みなさまこんばんは。齋藤です。
少し日にちが開きましたが、9月6日(火)福島民友「みんゆう随想」に掲載された
「さみどりの合歓」を転載いたします。

ググると写真がたくさん出てきます、「ビルマネム」。

惜しむらくは、どういうわけか現地にいた時に一枚も写真を撮っていなかったこと。
いつかまた、見に行けたらよいのですが。

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さみどりはアラビアの合歓あかね色はふるさとの合歓あかね色咲く『湖水の南』


2007年8月から2010年6月までの3年間、私はアラブ首長国連邦の首都であるアブダビという街で働いていた。日本語教師として、現地の公立小学校に通うアラブ人の子どもたちに日本語を教える仕事である。アブダビ政府と取引のある日本の石油会社が募集していた仕事だった。

外国で暮らしてみたい、という漠然とした思いはあったけれど、「アラビア」に対してそれほど関心があったわけではない。正直に言ってしまえば、アブダビという街がどこにあるのかも心もとなかった。当然アラビア語もわからないし、現地の文化や生活習慣についての知識もない。そんな私がひとつの求人広告を見つけたことをきっかけに3年間現地で暮らすことになったのだから、人生何があるかわからないものである。

アラビア湾(ペルシャ湾)に面したアブダビは、世界一の高層ビル「ブルジュ・ハリーファ」のあるドバイから、自動車で1時間半ほど。ドバイ同様かなり豊かな街である。何より驚いたのは、緑の多いことだった。50度を越える炎天下にも関わらず、街中にナツメヤシの木が茂り、ブーゲンビリアの花が溢れるように咲いている。よく見ると根元にパイプが張り巡らされていて、一日中惜しみなく水がまかれているのだった。

 そんなアブダビでの生活に少しずつ慣れて、どれぐらいたったころだろう。夕刻に海沿いの道を散歩していると、大きな樹がたくさん花をつけているに気がついた。その花は淡い黄緑色で、上質の化粧筆をぽうっとひろげたような姿をしている。見上げていると、海と砂漠の砂のにおいのする風に混じって、甘い香りが漂ってきた。

――ああそうか、これは合歓の花だ。

 調べてみると、この「さみどりの合歓」は「ネムノキ」とは別種で、和名を「ビルマネム」というらしかった。別種とはいえ、日本の「あかね色の合歓」とよく似ている。以来散歩のたびにこの「さみどりの合歓」を立ち止まって見上げるのが、私のささやかな楽しみの一つとなったのである。

この夏も、あちこちで「あかね色の合歓」を見た。アブダビでもきっと、あの「さみどりの合歓」が咲いているだろう。そして私と同じように見上げて微笑んでいる誰かが、いるはずだ。




by chicayoshi | 2016-09-18 20:02 | エッセイ | Trackback | Comments(0)
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みなさまこんばんは。齋藤です。
すっかりご無沙汰してしまいました。

さて、既にTwitterやFacebookでは前々からお知らせしており、
また今月発売となった「現代短歌」「短歌往来」でも取り上げていただいておりますが、

同人誌「中東短歌3」


がいよいよ11月24日(月・祝)の

文学フリマ


にて発売となります!!

一号で宣言した通り、この三号が最終巻です。

メンバーは創刊号から変わらず、

私齋藤芳生、柴田瞳、千種創一、町川匙、三井修、幸瑞 の6名。

阿波野巧也さんが、「異郷の中に同郷を見る」と題して前号評を書いて下さっています。

今回のゲストは、
シリア人の短編作家であるイブラーヒーム・サムーイールさん。
「シリアとの距離を埋めるもの」と題して齋藤と対談をしてくださいました。
勉強になった。。。

この対談は、2014年5月29日に、アンマン←→福島をSkypeを繋いで行われました。
(通訳の千種さん、K・Hさんに感謝!!)

町川匙による翻訳で、サムーイールさんの短編小説「このとき」も収録されています。

もちろん短歌作品や評論、エッセイと、その他の内容も大充実。
どうぞ皆様、この機会をお見逃しなく!!

それではまた~!!
by chicayoshi | 2014-11-21 19:56 | 中東短歌 | Trackback | Comments(0)

冬がやってくる

みなさまこんにちは。齋藤です。
今日はアブダビ(UAE)ネタ。


きれいでしょ~。

これからの季節、湾岸には朝夕、とても濃い霧が立ちこめるようになります。
今でも思い出すのは、アブダビに住んでいた頃、冬休みの一時帰国から戻った時のこと。
やはり濃い霧のために飛行機がドバイ空港に降りることができず、
結構遠いバーレーン国際空港まで行っちゃったことがあります^^;

霧の後、ぽつぽつと雨が降り出したら、いよいよ湾岸の冬、です。






by chicayoshi | 2014-10-21 14:14 | アブダビ | Trackback | Comments(0)
みなさまこんばんは。齋藤です。
今夜は掲載情報を。

今週10月3日(金)福島民報「ティータイム」に、

エッセイ「ブーゲンビリアの記憶」

が掲載されます。
歌集『湖水の南』に収めたアブダビでの歌について書きました。
福島の皆さま、お読みいただければ幸いです!

ではではまた!


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by chicayoshi | 2014-09-30 22:16 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)

アブダビの「熱い」夏

みなさまこんにちは。
暑いですね。。。。。
そして台風が接近中。このブログをご覧いただいている皆様がお住まいの地域は大丈夫でしょうか?

さて、アブダビに行っていた間、日本の家族や友人たちによくメールなどで送っていたのが、
アブダビは「暑い」のではなく「熱い」
という言葉でした。
だってほんとに「熱」かったんだもの。。。
というわけで、今日は福島民報の「ティータイム」に2012年7月に掲載された、
暑い暑いアブダビの夏のお話です(今週掲載の原稿じゃないよ)。
もう2年経ったのか。。。
では、どうぞ。


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アブダビの「熱い」夏


あんまり暑くて自動車のボンネットの上で目玉焼きが焼けそうだ、という冗談があるが、私が日本語教師として暮らしていたアラブ首長国連邦の首都・アブダビでは、ボンネットの上で卵を割ると本当に目玉焼きを焼くことができる。

とにかく夏のアブダビは「熱い」。「暑い」のではなく、「熱い」。雲ひとつない空に、大きな太陽がひたすら照り続ける。特に六月から九月にかけては、日中の気温が連日50度近くにもなる。街全体がアラビア海(ペルシャ湾)に面しているため、湿度はいつも80パーセント以上。5分も外を歩くと、全身汗でびっしょりになってしまうのだ。この「熱い」アブダビで働き始めたばかりの夏、私は同僚の先生とそのご主人にこっぴどく叱られた。

アブダビの公立学校は朝7時から始まり、午前中で授業が終わる。「熱さ」を避けるためだ。授業を終え、子どもたちを下校させると先生たちもすぐに帰宅するのだが、その日私は一人で学校を出て、タクシーを捕まえるために700メートルほど離れた大通りまで歩いたのである。新学期が始まって一週間ほど経っていた。本当は初日からタクシー会社と契約をして毎日通勤の送り迎えをしてもらうことになっていたのだが(自分の車を持っていない場合、電車やバスなど公共の交通機関が少ないアブダビではそれが一般的)、手違いがあってまだ契約ができていなかった。いつも同僚の先生たちが自分の車に乗せて送ってくれていたのだが、いつまでもお世話になるのは申し訳ないし、今日は自分で帰ってみよう、と思ったのである。

時間は午後一時半。ぎらぎらと照りつける太陽の下をのろのろ歩き、大通りに出てタクシーが通るのを待った。しかし、よく見かけるからすぐに捕まるだろう、と思っていたタクシーが、なぜかこの日に限って一台も通らない。あっという間に十数分が経過。額から大粒の汗が滴り落ちて目に入り、あ、と思った時、けたたましいクラクションの音と共に一台の赤い車が私の目の前に止まった。乗っていたのは算数担当のマリヤム先生と、仕事を終えた彼女を迎えに来た、そのご主人。

「乗りなさい!こんなところで何してるの!まさかあなた、学校からここまで歩いて来たの?」

「ダメじゃないか!熱中症で倒れたらどうするんだ!早く乗って!」

 短い時間だと思っても、夏の日中は絶対に外を歩いてはいけない。車がない時には必ず誰かに声をかけなさい。迷惑なんて気にしてはダメ。この街ではみんなそうしているのだから。こんこんと私を諭し続ける二人は、まるで本当の両親のようだった。私が生まれて初めて経験した、砂漠の国の「熱い」夏だった。



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by chicayoshi | 2014-07-09 10:00 | エッセイ | Trackback | Comments(0)
みなさまこんにちは!齋藤です。
久々に掲載情報。

今週7月11日(金)、福島民報「ティータイム」のコーナーに、エッセイが掲載されます。

タイトルは

「ラマダン、再び」

エクラスのことともちょっとからめて書きました。
お楽しみに!!

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改めまして、エクラスが送ってくれたイフタールメニュー写真の数々。

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by chicayoshi | 2014-07-08 13:45 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)
みなさまこんばんは。齋藤です。

7月ですね。
そしてアラブ圏ではそう、ラマダン!!
今年は6月28日からでした。
さて、アブダビに行って以来、齋藤がラマダンの間よく聴いているのが サミー・ユースフ  です。
もともと大変敬虔なムスリムで、
歌もそれぞれに宗教色が強いです(決して過激じゃないですよ。愛にあふれてます)。
だからアラブ諸国ではラマダンといえばこのひと、って感じ。
YOUTUBEでも、"sami yusuf ramadan" とかで検索するとたくさん動画がヒットします。
アブダビに発つ前に出会った友人が教えてくれたのですが、まあその声の美しいこと。




すでにいろいろなところで書いていますが、
基本的にラマダン(断食月)というのは、お祭りです。
普段さほど敬虔でない人たちも神様を思い出して、
家族や親しい友人たちと健康やささやかな幸せを喜び合って楽しく過ごす、大切な期間です。
毎日毎日悲しいニュースが絶えないけれど、
今年も世界中のムスリムの人々が、それぞれに心温まるラマダンを過ごせることを願ってやみません。

と、いうわけで、今年も

Ramadan Kareem!!







by chicayoshi | 2014-07-01 23:43 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

交通標識

みなさま、こんばんは。

久々にアブダビネタ。

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現地に行ってた時に某SNSサイトにあげたことがあったのですが、
いろいろ写真整理してたら出てきた結構気に入っている二枚。
二枚目、歩く人の絵がちゃんとカンドゥーラ着てるでしょ^^。

返す返すも心残りなのは、郊外に出た時に見かけた
「駱駝注意」
の標識の写真が撮れなかったこと。
ええ、あったんですよ、ほんとに。
いつか再訪した時には絶対撮るもんね。

もうすぐラマダンです。






by chicayoshi | 2014-06-24 22:56 | アブダビ | Trackback | Comments(0)

コーニッシュの夕暮れ

みなさまこんばんは。齋藤です。
ゴールデンウィークも終わりましたね。

齋藤も本を読んだり映画を観たり美術館に行ったり、
遠方から訪ねてきてくれたお客様や妹家族と美味しいものを食べたり、
楽しく過ごしました。

さて、今回また掲載情報をアップしそびれてしまったのですが(おい)、
先週5月2日(金)の福島民報「ティータイム」に掲載されたエッセイを再掲いたします。以前にもこのブログや「アブダビ通信」で書いたことのある、「コーニッシュ」のお話です。

では、どうぞ!

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コーニッシュの夕暮れ

 アラブ首長国連邦の首都であるアブダビで暮らしていた頃の私は、コーニッシュ、とか、コルニーシュ、と呼ばれる海沿いを散歩するのを日課にしていた。海はアラビア湾(ペルシャ湾)である。   

爆発的に増え続ける人口に下水の処理が追いついていないため少々濁ってはいるのだが、それでもサンゴの生息する海は鮮やかなエメラルドグリーンをしていて、いつも凪いでいた。約十キロに渡って色とりどりのタイルで整備された遊歩道は、そのままビーチや公園に繋がっている。周辺には青々とした芝生が敷かれ、花が植えられ、ナツメヤシの木が整然と並ぶ。根元には隈なくスプリンクラーが張り巡らされていて、勢いよく水を噴き出していた。

このコーニッシュを歩くのは、冬以外はいつも夕暮れ時。強烈な日差しと海からの湿気がおさまってぬるい風が吹くと、私だけでなく、この街に住む人々はみなコーニッシュに出て来る。

ベビーカーに赤ちゃんを乗せて、幸せそうに公園へと歩いてゆく若い夫婦。かけっこをする幼い兄弟。海を背景にわいわいと写真を撮っている女の子たちは、高校生だろうか。その隣では年老いた夫婦が、しっかりと手を握り合いながら夕陽に光る海を見つめている。彼らは、この砂漠の街にあっという間に高層ビルが立ち並んでゆく様を見続けて来た、まさに生き証人だ。インドやパキスタンから来た出稼ぎ労働者たちも来ている。お世辞にもよいとは言えない労働条件の中で働いている彼らも、一日の仕事を終えてコーニッシュに立つ時の表情は優しい。やがて、モスクから礼拝の時刻を告げる「アザーン」が朗々と響く――。

私が住んでいる間にもコーニッシュでは何度も整備工事が行われ、カフェやドーナツショップもでき、ますます人が増えた。それでも不思議と嫌な感じがしなかったのは、コーニッシュに来て凪いだ海を眺め、ぬるい風に吹かれ、夕陽を浴びているうちに、誰もが年齢も性別も国籍も、忘れてしまうからだろう。日中の過酷な暑さの中で出会う嫌なことも辛いことも、「まあ、いいか」と思える。気がつくと、見ず知らずの者同士が顔を見合わせて笑っているのである。

 今日もコーニッシュにはたくさんの人々が集まって、思い思いに夕暮れを楽しんでいるだろう。再びアブダビを訪れる時には、私も真っ先に飛んでいきたい。あの海は、昔とまったく変わらない表情で凪いでいるはずだ。


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by chicayoshi | 2014-05-06 22:14 | エッセイ | Trackback | Comments(0)
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みなさまこんばんは。齋藤です。

猫が好きです。ええ。
いつか猫と暮らすのが齋藤の悲願であります☆
(いや、もちろん犬も好きですよ。基本的に動物はなんでも好き。)

さてそんなわけで今宵は、
今年2月に福島民報「ティータイム」に掲載された、アブダビの猫の話。
(この時は掲載情報をアップできませんでした。申し訳なし。)
アラブの人は本当に猫が好きです。
私が住んでいたフラットの周りにも当然猫がたくさんいて、しかも人懐こい。
彼らと遊んでいるうちにご近所の子どもやおじさん、おばさんが声をかけてきて、それで彼らとも仲良くなりました。
アラブの人って、なんとなく彼ら自身の性格や考え方も「猫っぽい」と思います。もちろん、よい意味でね。

では、どうぞ。

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アブダビの猫は、まるくならない。

 アブダビの猫は、まるくならない。


 いつも通りの暑い日だった。この日も授業を終えて、同僚のアイーシャと教室を出て帰ろうとしていた、その時。中庭からものすごい勢いで白い塊が飛び込んで来て、私とアイーシャの間をすり抜けた。そのまま唸り声をあげて教室をぐるぐると三周ほど駆けまわったかと思うと、教室の後ろに敷かれた絨毯の上にばたりと倒れて動かない。猫だ。

 アイーシャと二人で近寄ってみるとまだ子猫で、きれいな白い身体を伸ばしたまま、すうすうと眠っている。

「喧嘩でもしたのかしらねえ、かわいそうに。ずいぶん疲れてるわ」

アイーシャがつぶやくように言うと、遠くから別の猫の穏やかでない鳴き声が聴こえた。どうやら追いかけられて逃げて来たらしい。私たちはこの小さなお客さんに餌もミルクもやらないかわりに追い出すこともせず、ドアを半開きにしたまま、そっと教室を出た。


 アラブ首長国連邦に限らず、アラブの人々はみんな猫が大好きだ。こんなふうに家や学校に猫が迷い込んで来るのもよくあることで、誰も嫌がらない。大きなスーパーマーケットなどに行くと必ず入り口に猫の餌と水を入れるための皿が置いてあって、人懐っこい猫が厳めしい顔をした警備員のおじさんと一緒に「店番」をしている。店に来る客はみんな通りすがりにおじさんに声をかけ、まるまると太った猫のお腹を撫でていくのだ。

 なぜアラブの人々はかくも猫が好きなのか?ちなみに、犬は狂犬病などがあった名残だろうか、コーランでは「不浄な動物」とされていて嫌う人が多い。実際、猫はアブダビの街中にいるのに、野良犬を見かけたことは一度もなかった。

イスラームの始祖である預言者ムハンマドも大の猫好きだったこと。アラブの人たちにとって、猫は昔から貴重な食糧を荒らし病気を媒介するネズミを退治してくれる、よきパートナーだったこと。この二つが話を聞いた大方の人々の意見だったが、どうもそれだけとは思われない。きっと猫にはアラブの人たちをたまらなく引き付ける魅力が何かがあるのだが、今もって謎のままである。

この日の帰り道、乗っていたタクシーが路地で急ブレーキをかけた。今度は、猫の親子が飛び出したのだった。

「ごめんなぁ、お客さん。」

 エジプト人の運転手さんが、楽しそうに言った。

「猫はいいなあ、みんなに餌をもらって、かわいがられて、子どもを産んで。出稼ぎの俺よりずっといい暮らしだよ」


 アブダビの猫は、やっぱりまるくならない。


※2014年2月28日掲載。タイトルと本文を少々修正しました。


by chicayoshi | 2014-04-27 22:29 | アブダビ | Trackback | Comments(0)

短歌結社「かりん」所属齋藤芳生のブログです。「みしゅみしゅ」はアラビア語で「あんず」のことです。主に齋藤芳生の掲載情報やエッセイなど。最近は写真も好きです。どうぞよろしく。


by chicayoshi