花の落ちる音

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今日の阿武隈川と安達太良連峰(左)と吾妻連峰(右)。
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1時間後。


みなさまこんばんは。齋藤です。
さて本日は、今週火曜日に福島民友「みんゆう随想」に掲載されたエッセイ
「花の落ちる音」
を転載いたします。

ちなみに凌霄花(のうぜんかずら)ってこれね↓。

では、どうぞ。

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凌霄花ほたりと落ちて落ちるたびに秋に近づきゆく夕暮れは   『湖水の南』


 今年の夏は、いつまでもいつまでも降り続く雨が止むのを待ちわびている間に終わってしまった。一ヶ月以上もの間続いた雨がようやく上がって晴れ間がのぞいたと思ったら、街はもうすっかり秋の気配だ。ひんやりとした空気のなか、我が家のささやかな庭もいつの間にか秋の虫たちの澄んだ鳴き声でいっぱいになっている。

太陽を求めて高く伸びた向日葵。今年も見事な花を咲かせていたご近所の百日紅や、真っ白な槿。プランターや花壇に植えられた真っ赤なサルビアやカンナ、そしてマリーゴールド。いつ止むとも知れない雨のなかで健気に咲き続けた夏の花々も、その色とりどりで鮮やかな色を濡らしたまま短い花季を終えようとしている。見つめているとまるで夏休みの間思う存分外で遊べなくてしょんぼりしている子どもたちのようで、なんだか可哀想だ。

夏の花といえば、子どもの頃から私が大好きなもののひとつに凌霄花がある。見上げるほどの高さにまで蔓を伸ばして勢いよく咲くあの大きなだいだい色の花は、お盆休みあたりの強い日差しと、それに負けじと鳴き続ける蝉たちの大合唱にいかにも似つかわしい。花の姿が好ましいだけではなく、「のうぜんかずら」という古風で日本的な名前がまた、美しいと思う。初めて「凌霄花」という名前を知った時には、のうぜんかずら、のうぜんかずら、と何度もつぶやいてはその音の響きを楽しんでいた。

夏の間を咲き誇っていた凌霄花の花は、やがてひとつ、ふたつ、と地面に落ちはじめる。いつの間にか木の根元は落ちた花のだいだい色でいっぱいだ。この花は、落ちる時にかすかではあるけれども音をたてる。それはそのまま夏が終わってゆく音であり、そしてまた、秋が少しずつ近づいてくる音でもある。雨に打たれ続けていたせいだろう、この夏はそのかすかな音が幾分重い気がした。

ちなみにこの花は、その形がラッパのようであることから英語名を「トランペット・ヴァイン」とか「トランペット・フラワー」というらしい。名前とは不思議なものだ。これではまるで別の植物ではないか。私にとって、「凌霄花」はこれからもずっと、「凌霄花」でなくてはならない。


by chicayoshi | 2017-09-10 22:21 | エッセイ | Trackback | Comments(0)



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黄金桃。

みなさまこんばんは。齋藤です。
あっという間に9月!!

7月後半から8月にかけてずっと雨が降っていて、
やっと晴れ間が、と思ったらもうすっかり空気が秋です。

ちなみに齋藤、更新をさぼっている間にTwitterを再開しました。

基本的にあほなことしか呟きませんが、
もしよろしかったらのぞいてみてくださいね。

さて、この「みしゅみしゅ」の更新もここのところ間遠になっておりますが、
今回は掲載情報です。

今月発売の

「現代短歌」10月号

より、作品24首の連載が始まります。
3カ月に一回、合計8回、2年間に渡る連載です。
第1回目のタイトルは「桃畠の雨」。
「いいでん」
が登場しますよ~。

お手に取っていただければ幸いです。
それでは、また!


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梨も出ましたよ♪


by chicayoshi | 2017-09-01 22:30 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)
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梅雨入りですなあ。

みなさまこんばんは。齋藤です。
随分更新していませんでしたが、
今回は

福島県文学賞70周年記念講演会・ワークショップ

のお知らせです。

今年第70回を迎える福島県文学賞の記念事業として、7月9日(日)に福島市にて開催されます。
齋藤は中学・高校生を対象とした短歌ワークショップの講師として参加します。
詳しくは ↓ こちら。
福島民報さんでも紹介していただいております。
短歌・俳句のワークショップは、中高生だけではなく一般の方の参加も可能です。
既に残席わずか。
お近くの方、ぜひお気軽にご参加ください。








by chicayoshi | 2017-06-23 23:16 | ごあいさつ・お知らせ | Trackback | Comments(0)
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今年も咲きました、大手鞠(この写真は去年の)。

みなさまこんばんは。齋藤です。

本日は掲載情報です。
明日5月13日(土)の福島民友「みんゆう随想」に、エッセイ
「行く川を追いかけたくて」
が掲載されます。

行く川を追いかけたくて真っ白に柳絮を飛ばしていたり柳は 『桃花水を待つ』

の一首より。

「柳絮(りゅうじょ)」のお話です。

福島近隣のみなさま、お手にとっていただければ幸いです。

ではでは!



by chicayoshi | 2017-05-12 21:37 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)

春が来た

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今年の桜@新浜公園。

みなさまこんにちは。齋藤です。
さて本日は、先月4月6日に福島民友紙の「みんゆう随想」に掲載されたエッセイ
「春が来た」
を転載いたします。

あっという間にもう季節は初夏ですが……^^;

では、どうぞ。

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春の女神そのふくらかなる唇に呼ばれてたれもたれも空を見る 『湖水の南』


――春ですよお。


 そう、どこからか誰かの声が聴こえたような気がした。少し急いでいた歩みを止めて振り返ったけれど、誰もいない。

 よく晴れた空が明るい。頬に触れる風が、大分やわらかい。阿武隈川の河川敷に植えられた大きな柳の木々も一斉に芽をふいて、しなやかに揺れる無数の枝が淡い緑色に染まっている。ここに歩いて来る途中すれ違った人々はみな、もう真冬用の厚ぼったいコートやダウンジャケットを着ていなかった。家々の庭先に植えられた梅の木はどれもとっくに満開で、咲き始めたばかりの沈丁花もいいにおいだった。毎年開花を楽しみにしている古くて大きな桜の木も、たくさんついたつぼみがずいぶん膨らんでいる。陽当たりのよいところならば、来週中には咲き始めるだろうか。

 そういえば子どもの頃、「入園式」や「入学式」といった言葉に添えられるイラストに決まって満開の桜の花が描かれているのが不思議だった。私が生まれ育った福島市では大体ソメイヨシノが満開になるのが四月も半ばになってからで、いつも「入園式」や「入学式」の頃にはまだ咲いていないからだ。

 その理由がようやくわかったのは、東京の大学に進学した時。四月の上旬、ちょうど大学の入学式の日に合わせたかのように、見事に桜が満開だったからだ。今思うとおかしいのだけれど、桜の開花時期が地域によって違うということを、私はあの時初めて実感として理解できた。そんな私の大学生活のはじめ、一番に仲良くなった友人は盛岡出身だったが、彼女にこの話をしてみたら「私も同じこと考えてた!」と言って笑った。その後四年間、彼女とはずっと仲がよかった。


――春ですよお。


 また、誰かの声が聴こえたような気がした。辺りを見回してみたけれど、やはり誰もいない。空は相変わらずよく晴れていて、眩しい。頬に触れる風に、心なしか濡れた土のにおいがする。春のにおいだ。

 そうだ。もう春なんだ。

 私ももう真冬用のコートは着ていない。深く息を吸い込んで、大きく吐き出して、また歩き出す。歩きながら、また空を見る。明日の空もきっと、よく晴れて美しいに違いない。



by chicayoshi | 2017-05-03 13:57 | エッセイ | Trackback | Comments(0)
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きらきら。

さて続いては、
昨年夏に東北歌会(福島市開催)でご一緒したナイス害さん企画の
「第2回 山形歌会」のお知らせです。

齋藤茂吉記念館で歌会!

いっや~、なんて贅沢。

日時 2017年5月28日(日) 13:00~16:00
場所 齋藤茂吉記念館 環翠亭



参加費 1280円÷参加者人数

題詠・自由詠各1首・計2首を5月21日までに齋藤芳生にお送りください。

題詠のお題は、「魚を詠み込んだ歌」です。

当日の司会はわたくし、齋藤芳生が担当いたします。

こちらもどうぞよろしく!!





by chicayoshi | 2017-05-02 22:10 | ごあいさつ・お知らせ | Trackback | Comments(0)
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喩えるならば一輪の薔薇。

こちらはお知らせです。
「ロクロクの会」の仲間でもある沼尻つた子さんの第一歌集

『ウォータープルーフ』
の批評会が、今月5月20日(土)に東京都内にて開催されます。

詳細はこちら!

 日時 5月20日(土)13:00〜17:00   
 場所 ハロー貸会議室池袋東口 RoomA (東京都豊島区東池袋1-42-14 28山京ビル7階)
    JR山手線 池袋駅 東口 徒歩4分

パネリストは

高木佳子さん(潮音)
内山晶太さん(短歌人)
小原奈実さん(本郷短歌) 
三井修さん(塔・司会兼)

の皆さんです。豪華!

当日はロクロクのメンバーも集まります。
ぜひお越しください!



by chicayoshi | 2017-05-02 20:39 | ごあいさつ・お知らせ | Trackback | Comments(0)
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つやつや。

みなさまこんばんは。齋藤です。
すこしご無沙汰してしまいました。
あっという間に5月!
昨年度末から走りっぱなしだった私にとっては、
今回久々のちょっと長いお休みです。

さて、
今週末の5月7日、東京で開催される

「第24回文学フリマ東京」

にて、
齋藤も参加している

「フワクタンカ」

が販売されます。

参加しているのは、

内山晶太さん、黒瀬珂瀾さん、田村元さん、盛田志保子さん、山内頌子さん、染野太朗さん、そして私。

それぞれが新作十首を発表します。
お値段 100円。
みなさん、当日は迷わずブース G-31 へ直行してくださいね。

よろしくどうぞ~!






by chicayoshi | 2017-05-02 19:12 | ごあいさつ・お知らせ | Trackback | Comments(0)
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春だ~~~~~!!!

みなさまこんばんは。齋藤です。

今宵は掲載情報。

今週4月6日の福島民友「みんゆう随想」、今回は

「春が来た」

です。

春の女神そのふくらかなる唇に呼ばれてたれもたれも空を見る 『湖水の南』

の一首より。
今回も、阿武隈川沿いをぐるぐる歩きながら考えた文章です。
ぜひご覧ください。

それではまた!






by chicayoshi | 2017-04-04 21:40 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)
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今日の阿武隈川。

みなさまこんばんは。齋藤です。
本日は、先月福島民友「みんゆう随想」に掲載されたエッセイ
「川よお前を見つめて立てば」
を転載いたします。
なんだかんだ言っても、
「あなたの代表歌は?」
と訊かれたら、きっとこの一首になるんだろうなあ、と思っています。
今年も「桃花水」の季節がやってきました。
では、どうぞ。


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川よお前を見つめて立てば私の身体を満たしゆく桃花水  『桃花水を待つ』


『広辞苑』によると「桃花水(とうかすい)」とは、「(桃花が開く頃に春雨や氷の解け水で川が増水するからいう)春季の増水。」とある。三月を迎え、日毎に春の気配が濃くなってゆくまさにこれからが「桃花水」の季節だ。第一歌集のタイトル「桃花水を待つ」は、そのまま「春を待つ」という思いを込めたものである。「川」は阿武隈川のこと。川に対して「お前」と呼びかけるのはちょっと不自然かもしれないが、私にはこの呼び方が一番しっくりくる。

 子どもの頃から、私の生活の傍らにはいつも阿武隈川が流れていた。自転車通学をしていた中高生の頃には、遠回りを承知で毎日川沿いを走っていた。自転車を漕いでいると、広い河川敷の葭原からいろいろな鳥の声がした。夜に部屋の窓を開けていると、誰かが川岸でトランペットかサックスを練習している音が聴こえてきたこともある。秋口には橋の上に大量発生したカゲロウの死骸が雪のように積もっていて、気味が悪かった。冬は、毎朝白鳥の鳴き声で目を覚ました。

 そして、春。濁っているけれども勢いのよい水の流れと明るい陽射しが、冬の間雪のように冷たく凝った心と身体を、魔法のように解き放ってくれる。この春の水を表す「桃花水」という言葉を知ったのは、大分大人になってからのことだけれども。

 今も週末になると、私は好きな音楽を聴きながら阿武隈川沿いをどこまでも歩く。川の流れに沿って歩いていると、慌ただしい毎日の中でのちょっとしたイライラや考えごとが、少し濁った水と一緒にきれいに流れてゆくような気がする。そして、考えあぐねていた歌の下の句や文章の冒頭部分が、ふっと思い浮かんだりもする。「川よお前を見つめて立てば私の身体を満たしゆく桃花水」という一首ができた時も、やはり毎日のように川沿いをぐるぐると歩いていた。歩みをふと止めて川面を見つめた時に、この上の句は身体の奥底から自然と湧き出てきたのだ。

 私という人間を一番よく知っているのは、阿武隈川かもしれない。「あなた」や「君」ではない。ましてやただの「川」でもない。阿武隈川は私にとっていつも「お前」と呼ぶべき、いわば「相棒」なのだ。


by chicayoshi | 2017-04-02 22:03 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

短歌結社「かりん」所属齋藤芳生のブログです。「みしゅみしゅ」はアラビア語で「あんず」のことです。主に齋藤芳生の掲載情報やエッセイなど。最近は写真も好きです。どうぞよろしく。


by chicayoshi