梅一輪

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わが家の白梅もようやく咲きました(なぜか毎年開花が遅い)

みなさまこんばんは。齋藤です。
今夜は、2月に福島民友新聞「みんゆう随想」に掲載されたエッセイ「伝えたかったこと」を転載いたします。
(あまりいいタイトルじゃないなあ)
家の庭の梅の花が咲いていい写真が撮れたら、と考えていたら遅くなってしまいました。
もう3月も終わってしまう……。

では、どうぞ。

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梅の花ひとつ開ける喜びを砂の上描ききれず私は 『桃花水を待つ』


 あなたは梅と桜と、どちらが好きですか。誰かにそう訊ねられたら、桜ももちろん好きな私は少し迷ってから、それでも梅の花を選ぶだろう。紅梅も白梅も、どちらも大好きだ。

少し日差しはあたたかくなったけれどまだまだ寒いな、という頃、首をちぢめて俯き加減に街を歩いているとどこからともなくふっとよい香りが漂ってくる。あの瞬間が、なんとも言えず嬉しい。顔を上げると紅梅の小さな花がふたつ、みっつ、と開いている。梅の花が開いたら、冬の凍りつくような寒さも終わり。春はすぐそこだ。

私が三年間日本語教師として働いていたアラブ首長国連邦という国は典型的な砂漠気候で、季節が「夏」と「冬」の二つしかない。日中の気温が五〇度以上、しかも海沿いであるため湿度も高い「夏」。そして気温も湿度も下がり、時にぱらぱらと雨も降る「冬」。

「冬」とはいえ、イメージとしては日本の五月半ば、という感じだ。朝晩に湾岸特有の濃霧が発生して飛行機の発着が遅れたり、時には「ぱらぱら」どころではない雨や強烈な砂嵐に見舞われたりもするけれど、基本的には天気がよく、過ごしやすい日が続く。この国で初めて「冬」を迎えた時にはほっとした。「夏」の身の危険を感じるような暑さ(そしてその暑さと戦うために冷房がフル稼働している室内の寒さ)に心身ともに疲れていたし、何しろ「夏」の間は暑すぎて、日中の外出もなかなかできなかったのだ。そしてほっとしながらも、そうか、この気候では梅も桜も咲かないな、と妙に納得したのだった。梅も桜も冬の厳しい寒気にさらされなければ、春に花を咲かせることができない。

アラブ首長国連邦での私の仕事は、現地の小学生に日本語や日本の文化を教えることだった。日本語での挨拶や簡単な自己紹介を練習させたり、今や世界中で市民権を得たMANGAを紹介したり、三年間いろいろなことをした。けれど私が彼らに本当に伝えたかったことは、つきつめればたったひとつだったように思う。寒い寒い冬の後に、とうとう開いた梅の花。それを見つけた時、私たちがどんなに嬉しいか――。教えることも伝えることも、ついにできなかったのだが。


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by chicayoshi | 2017-03-23 21:58 | エッセイ | Trackback | Comments(0)
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松齢橋。奥に見えるのが大仏(おさらぎ)橋。

さて、今夜はもう一件掲載情報。
こちらも今週発売の「短歌往来」4月号、
特集「日本の橋を詠む」に、新作5首と小文が掲載されております。

全国各地の「橋」を詠う、というこの企画、
齋藤が今回取り上げたのは福島市の「松齢橋(しょうれいばし)」です。
福島市は市街地を貫くように阿武隈川が流れているので、
どこへ行くにも必ず一本は橋を渡る、という感じになります。

松齢橋はその中でも私が子どもの頃から、
学校の行き来をはじめとして毎日渡っていた橋です。

そしてそして!

今号の「短歌往来」では、
「歌誌漂流」にて、鈴木竹志さんが「66」についてとても懇切に書いて下さっています!

こちらも併せて、ぜひご覧ください。

ではでは。







by chicayoshi | 2017-03-17 23:15 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)
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まだ寒い。

みなさまこんばんは。齋藤です。

福島もようやくすこーし春めいてきました。
入試も終わって、一段落。
(とはいえ来年度の準備を同時進行。)

さて、今回は掲載情報です。

今週発売の「現代短歌」4月号の特集「震災二〇〇〇日」に、

「ふくしまへ帰る」7首が掲載されております。

来嶋靖生さん、佐藤通雅さんの論考や特集中の座談会も読みごたえあり。
ぜひご覧ください。





by chicayoshi | 2017-03-17 22:51 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)

ひなまつり

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咲きました。

みなさまこんばんは。齋藤です。
年度末でばたばたとしております。
今日は歌会もおやすみ。

さて、昨日は桃の節句でしたね。

というわけで、
今日は昨年撮影した写真など。

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わが家のお雛様。
昨年母が久々に思い立って飾ったのを撮影。
長女の私が生まれた年に買ったものですから、
このお雛様も今年で40歳なわけですね。

この雛をしみじみと眺めていてできたのが、
昨年「歌壇」5月号に掲載された「花の渦」です。

大地震を耐えたる指の細きかな取り出だす箱の中なる雛(ひいな)

うつくしき扇ひらきて持つのみのそれのみの手よ古りし雛の

祖母よあなたの孫娘ふたりのための雛の袖の色も褪せたり

よい歌かどうかはわかりませんが、私自身としてはかなり思い入れのある一連。
今年もまた春がやってきます。

それでは今宵はこのへんで。
ごきげんよう。






by chicayoshi | 2017-03-04 21:30 | 福島 | Trackback | Comments(0)
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こんな風景が、子どもの頃にもあった。

みなさまこんばんは。齋藤です。
今日で2月も終わりですね。
今回は掲載情報。

明後日3月2日(木)掲載の福島民友「みんゆう随想」は、

「川よお前を見つめて立てば」

です。

川よお前を見つめて立てば私の身体を満たしゆく桃花水 『桃花水を待つ』

の一首について。
お手に取っていただければ幸いです。

では!








by chicayoshi | 2017-02-28 20:59 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)
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さて、この写真の中に白鳥は何羽いるでしょう?

みなさまこんばんは。齋藤です。

……寒い。

今年の冬は(も)あったかいなあ、と思っていたら、甘かった……。

さて、掲載情報。

今週23日(木)福島民友朝刊掲載の「みんゆう随想」、

今回は

「伝えたかったこと」

です。今回は、

梅の花ひとつ開ける喜びを砂の上描ききれず私は 『桃花水を待つ』

の一首から。

お手にとっていただければ幸いです。

ではでは!





by chicayoshi | 2017-01-23 22:08 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)
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春よこ~い!!

みなさまこんばんは。
齋藤です。
雪ですね……。
と、いうか一月の14~15日ってこちらでは毎年必ず雪が降っている気がします。
受験生、大変だな。。。。。。

さて、本日はお知らせです。

ご好評いただいております同人誌「66」、
第二刷ができあがりました(ぱちぱちぱち)!!

こちら↓からご注文いただけます!



(玲はる名さんの個人サイトです。)

これからもますます熱い「ロクロクの会」を、どうぞよろしく!

ではでは。






by chicayoshi | 2017-01-15 17:51 | ロクロクの会 | Trackback | Comments(0)
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ほのかに。


みなさま、お晩でございます。齋藤です。
もう松の内も明けますねー。

さて今回は掲載情報。

明日、1月7日、
「詩客 SHIKAKU - 詩歌梁山泊 ~ 三詩形交流企画 公式サイト」

に、齋藤芳生の新作十首「河口」
が掲載されます。
どうぞご覧くださいませ。

今回モチーフになっているのは阿武隈川の河口(真冬)です。

ではでは今宵はこれにて。





by chicayoshi | 2017-01-06 01:27 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)

杉の木を見上げて

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今年も一年、お疲れさまでした。

みなさまこんにちは。齋藤です。
いよいよ今日が大晦日。
今年もいろいろありました。
この「みしゅみしゅ」を再開できたのも、
私としては今年の大きな収穫のひとつ。
よかったなあと思っております。
そんなわけで今日は、
ようやく出来上がった年賀状を投函してから近所の神社と、そして神社の杉の木にもご挨拶。
来年も、よろしくね。

今年最後の「みしゅみしゅ」は、先日22日に福島民友の「みんゆう随想」に掲載された
「杉の木を見上げて」
を転載いたします(今回は少々加筆修正あり)。
この杉の木、上半分を伐られた後も元気です。
今はこんな看板が立てられております。

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では、どうぞ。

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伐られたる上半分より雪は降る大杉の幹抱こうとすれば『湖水の南』


 樹齢五〇〇年とも言われている「大杉」は、自宅から歩いてすぐの神社の境内にある。「ある」よりも「いる」と言ったほうが、しっくりくるかもしれない。

 一年中鬱蒼と葉を茂らせている枝からは、姿は見えないのだけれどいつも鴉の鳴き声がした。あまりにも太くて壁のように見える幹には、古くなってはがれた長い樹皮がだらり、だらり、と垂れている。子どもの頃は、この木、なんだかお化けみたいだな、と思っていた。けれど、いつも杉の木はそこに立っていたのである。当時神社の境内にあった鉄棒で苦手な逆上がりの練習をしていた時も、「探検」と称して妹と一緒に社殿の裏側をこっそりのぞいた時も、そして、初詣で柏手を打ち、御神籤を引く時も。高校三年生の冬、東京の大学を受験しに行く前日には、賽銭箱に小銭を放り込んだ後かなり長い時間目を閉じて手を合わせていた。杉の木は、そんな私の「神頼み」もじっと見ていたはずである。境内の地面はうっすらと雪が積もって白くなっていたけれど、杉の木の周りの地面だけは、降ってくる雪が遮られて黒々としていた。無事大学に合格して東京で一人暮らしを始めてからは、帰省する度に一度は神社にお参りに行き、そして杉の木を眺めた。もう「お化けみたいだ」とは思わなくなっていた。

 長年福島市の文化財にも指定されていたこの杉の木が伐られることになった時、私は日本語教師としてアラブ首長国連邦の首都、アブダビで働いていた。教えてくれたのは母である。電話で近況報告をしていたのだった。思わず、ええっ、と大きな声が出た。老化が進んで倒れるおそれが出てきたために、上半分を切断するという。「あんなに立派な木が伐られちゃうなんてねえ」と言う母の声を聞きながら、私も大きなため息を吐いた。オイルマネーで潤っているとはいえ、アブダビは灼熱の砂漠にたった数十年でつくられた都市である。街中どこをさがしても、樹齢数百年にも及ぶ大木を見ることはない。杉の木は、いつの間にか私の心のなかにこんなにも深く根をおろしていた。私はその事実に、この時になって初めて気づいたのだった。

 上半分を伐られてしまったものの、杉の木は今もちゃんと神社の境内の同じ場所に立っている。よかったなあ、と思う。伐られてぽっかりと見えるようになった空から、今年も真っ白な雪が降る。


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というわけで、

今年一年この「みしゅみしゅ」をのぞきに来てくださったみなさま、

ほんとうにありがとうございました。


どうぞよいお年を!!





by chicayoshi | 2016-12-31 16:36 | エッセイ | Trackback | Comments(0)
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某月某日、東京某所にて(けっこう有名な景色ですよね)。

みなさまこんばんは。齋藤です。
今日はクリスマスイブなんですね。
わたくし、繁忙期真っただ中であります。

今宵はちゃちゃっと掲載情報。

本日発売の角川「短歌」1月号

(←!)に、

「牡丹供養」7首+小文「わからないからこそ」

が掲載されております。

今回の一連のモチーフは、
須賀川市にある「須賀川牡丹園」で毎年行われている「牡丹焚火」です。


美しい行事だよなあ、と思います。
と、いうことでお手に取っていただければ幸いです。

それではみなさま、
どうぞ素敵なクリスマスを^^。






by chicayoshi | 2016-12-24 20:14 | 掲載情報 | Trackback | Comments(0)

短歌結社「かりん」所属齋藤芳生のブログです。「みしゅみしゅ」はアラビア語で「あんず」のことです。主に齋藤芳生の掲載情報やエッセイなど。最近は写真も好きです。どうぞよろしく。


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