桃のにおい

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黄金桃!


みなさまこんばんは。齋藤です。

大変お久しぶりです。

今年に入ってからは特に、いろいろなことがあってばたばたしておりました。


さて今回は、

先月8月28日(火)に福島民友新聞「みんゆう随想」に掲載されたエッセイ


「桃のにおい」


です。


今年も桃がおいしいですよね。



↑ 築地市場の情報を発信されている「築地ブログ」さんには、

 こんな素敵な「桃の家系図」が!!!画像お借りしました。

こんなにあるのね……。


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ということで、この夏も毎日(誇張ではなく)食べてますよ、福島の桃。

では、今回のエッセイ「桃のにおい」、どうぞ。



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私のこころ傷んでいるところつうっと流るる桃畠の雨 

                   「桃畠の雨」 現代短歌 2017年10月号


 この歌をつくってからちょうど一年になる。昨年は今年の猛暑など想像もできないほどの冷夏だった。最近は友人たちと「去年と今年を足して二で割るぐらいがちょうどいいのにねえ」と冗談めかして話してはよく笑っているが、あの冷夏はなんだかもう遠い昔のことのような気がする。

 冷夏でも猛暑でも、福島市で生まれ育った一人として毎年夏を過ごすために欠かすことのできないのは、桃である。猛暑の影響で今年は全体的にやや小ぶりだと聞いたが、やはり今年もおいしい。あのまるい形、あたたかみのある色、触れたときのやわらかな手触り、そして香り。これから出回る梨や林檎ももちろん大好きだけれど、桃という果物にはなにか魔法のように、そこにあるだけで人を幸せな気もちにする何かがある。

 3年間のアラブ首長国連邦での仕事を終えて帰国したのは8年前の夏。飛行機の中で、日本に着いたら食べたいもの、というのをいろいろリストアップしていたのだが、その筆頭に挙げていたのが桃だった。産油国のショッピングモールはおそろしいほどに広くて品数が豊富だが、日本の美しくて甘い桃はそうそう手に入らない。

東日本大震災直後からは仕事のために東京で暮らし始めた。あの年のの夏、実家から送られてきた大ぶりの桃を箱から取り出した時には思わず泣きそうになったし、泣きそうになりながら、ああ、福島はきっと大丈夫だ、だから私も大丈夫だ、と思った。

その後再び福島市に帰り、第二歌集の『湖水の南』を上梓したのも四年前の夏である。歌集を謹呈させていただいた方の一人が、大変に立派な桃をひと箱送ってくださった。桃は箱を開ける前からよいにおいがする。箱を開けて、見事に並んだ桃に思わず感嘆のため息をついた。福島に帰ってきたことも、福島をテーマにした歌集を出したことも、間違っていなかった。そう強く確信したのは、その時である。これからもっと、この福島という土地に深く入り込んで歌ってみようと決心した。

 いろいろな夏がある。時に苦しかったり辛かったりもするけれど、それぞれの夏の暑さのなかで、桃の実はいつも私に寄り添うように甘く実った。そんな桃が、私は大好きだ。


# by chicayoshi | 2018-09-01 22:29 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

行く川を追いかけたくて

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菜の花。

さて、本日の更新は2本立て。
昨年5月13日の福島民友「みんゆう随想」に掲載された、

「行く川を追いかけたくて」

です。

で、「柳絮(りゅうじょ)」って、これです。

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では、どうぞ。

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行く川を追いかけたくて真っ白に柳絮を飛ばしていたり柳は 『桃花水を待つ』

 

五月のよく晴れた休日、阿武隈川に向かっていつもの散歩道を歩いていると、どこからともなく白い、ふわふわしたものが目の前に飛んでくる。

飛んでくる、というよりも、漂っている、というほうが正確かもしれない。今あちこちで咲いているたんぽぽの綿毛だろうか。それとも、あたたかくなって元気に囀りはじめた小鳥の羽毛だろうか。その白くてふわふわしたものは、もっとよく見ようと目を凝らしたとたんにやわらかな風に吹かれて空高く舞い上がり、まぶしい日差しのなかに見えなくなった。

ああ、それにしてもなんていい天気だろう。少し前まで家を出る時には迷わずコートを着ていたのに、今日はコートを着るどころかもう少し薄着でもよかったかな、と思うぐらいだ。山々の新緑も、もう大分色を濃くしている。

散歩道が阿武隈川に近づいてくると、またあの白くてふわふわしたものが漂っている。気がつくとそれはひとつきりではなく、思いのほか数が多い。あちらこちらにふわふわと漂っていて、道路を行き過ぎる車が起こす風に吹かれるたびに舞いあがっては、またゆっくりと降りてくる。

そのまま歩いて阿武隈川に辿り着くと、川岸はもうその白くてふわふわしたものでいっぱいだ。道の端にはゆっくりと降りてきたそれがたくさん吹き寄せられて、雪が積もったようになっている。しゃがんで手に取ってみると、ほんのりとあたたかい。この白いふわふわのなかには、小さな粒が――とてもとても小さな粒が、ひとつずつ入っているのだ。川岸から風が吹くと、白いふわふわはあっという間に私の手から飛んでいった。

毎年この季節になると現れるこの白くてふわふわしたものの正体を、私は子どもの頃から知っている。阿武隈川の河川敷に植えられている何本もの大きな柳の木が、川風にゆったりとその枝を揺らしながら飛ばす綿毛――柳絮だ。

花の綿毛といえばたんぽぽしか知らなかった子どもの頃、私はこの風に舞う綿毛の白と、「りゅうじょ」という言葉の美しさを知った。川の流れを追いかけるように飛んでゆくたくさんの白い綿毛を日が暮れるまで見送ると、私の春が終わる。


# by chicayoshi | 2018-04-29 22:51 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

虹色の雲をさがして



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今年の桜はあっという間に咲いてあっという間に散ってしまった……。


みなさまこんばんは。齋藤です。
あっという間に4月も終わり!GWですね。
新年度の喧騒?も過ぎて、ほっと一息です。
春を通り越して夏が来てしまったかのような福島市、本日の最高気温30度。
でも空気がからっとしていて気持ちのよい1日でした。

さて今回のブログでは、

今月4月10日(火)福島民友「みんゆう随想」に掲載されたエッセイ

「虹色の雲をさがして」

を転載いたします。

「虹色の雲」=「彩雲」って、

これです。

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うっすら虹色になってるの、わかります?
ほんとはもっと鮮やかだったんですけどね~。
うまく撮れてないのは齋藤の写真の腕がいまいちなせい。

荒木健太郎さんのこちらの本に、
美しい写真と共に紹介されています。



では、どうぞ。

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白い凧揚げて子どもがつかまえるぴいんとまっすぐな春のひかりよ「天心」


 眩しい。

 福島盆地でソメイヨシノがいっせいに咲きはじめ、あっという間に満開になりそうだった午後。その、何かに急かされるように一気に始まった今年の春の空があまりにも眩しいので、普段はほとんどかけることのない色の濃いスポーツ用のサングラスをかけて外に出た。花見を兼ねたウォーキングである。住宅街に並ぶ家々の庭から、溢れるように咲いた花々。その間をずんずん歩いて阿武隈川まで出ると、河川敷に植えられた柳の木々もすっかり芽吹いて、あたたかな風に枝を揺らしている。もうツバメたちが来ていて、にぎやかに囀りながら飛び回っていた。かけていたサングラスを一度外してみたが、やっぱり今日はこのサングラスをかけてきてよかったな、と思った。この春の日差しを遮るもののない阿武隈川の土手の上は、そのままでは目を開けていられないぐらい眩しい。


 サングラスをかけてしまうとせっかくの春の光景が白黒になってしまう気がして嫌だったのだが、おかげで私はこの日、とても素敵なものと出逢うことになった。歩いていると、それまで燦々と照っていた太陽に薄く雲がかかった。サングラス越しに見ると、その雲が美しい虹色に輝いているのだ。「彩雲」である。「彩雲」とは雲が太陽の近くを通った際、その光の加減で虹色に色づいて見える現象で、古くからその美しさや珍しさから吉兆とされてきたという。ただ、多くは気づかれないだけで、実はよく見られる現象だ、とも聞いていた。その美しい虹色の雲の写真を一度見てからというもの、いつか本物を見てみたかった。


 ようやく見ることのできた虹色の雲を、もっとよく見たい。そう思ってサングラスを外すと、逆に色がわからなくなってしまった。――眩しい。「彩雲」は雲が太陽の近くを通った時に起きる現象だから、大抵の場合眩しすぎて見えないのだ。この日も、サングラスがなければきっと気づかなかっただろう。


 世界にはきっと、まだまだこの虹色の雲のように素敵なものがたくさんかくれているに違いない。春はそんな素敵な何かをさがしに行くのに、最もふさわしい季節である。「彩雲」は、思いのほか長くその色を留めて光っていた。


# by chicayoshi | 2018-04-29 22:34 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

短歌結社「かりん」所属齋藤芳生のブログです。「みしゅみしゅ」はアラビア語で「あんず」のことです。主に齋藤芳生の掲載情報やエッセイなど。最近は写真も好きです。どうぞよろしく。


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